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俺は缶詰を買い込んだ。
災害に備えて?いや、ちがう。
『夢缶』、中身を食べてから寝ることで思い通りの夢が見られる、最新の安眠アイテムだ。
大物俳優、ノーベル賞受賞者、あのアイドルの密かな恋人。この缶詰があれば、夜の間、俺は何にだってなれる。ああ、この夢がずっと続けばいいのに。

『夢缶は1日1缶まで、必ず睡眠前に。用法用量を守って、素敵な夢を!』

日が昇っても、天才であるために。
日が昇っても、ヒーローであるために。
日が昇っても、幸せであるために。

俺は缶詰を買い込んだ。
今日の俺はミュージシャン。画家。総理大臣。
皆が俺に注目する。カメラが俺を追う。今日もテレビに俺が映る。夢のようだ。

「次のニュースです。『夢缶』の発売以降、これを昼間に使用し夢と現実の区別がつかなくなる人が続出しています。製品は既に販売中止となっていますが、オークションなどでは高値で取引されており…」
SF
公開:18/09/08 20:37

みきやん

普段は病院で働くひと。
のんびり妄想したい。

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