その花が見たい

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「今夜楽しみだね」
休み時間に、隣の席の島田さんが僕に話しかけてきた。
「何が?」
「花火」
そうか。今日は近所の川で花火大会がある。
「島田さんは行くの?」
「うん」
島田さんは嬉しそうだ。
僕はどうしようか。花火はたしかに綺麗だ。でも、どちらかというと、花火より団子。
「……行く?」
「え、何?」
「ううん、何でもない」
考えことをしていたら、島田さんが何か言っていたのを聞き逃してしまった。
チャイムが鳴った。

出店の間を歩いている。
僕は、女の子と手を繋いで歩いている。
花火の音が、お腹に響く。
「……だよ」
女の子が僕に向かって言った言葉は、花火の音にかき消された。
昼間の島田さんみたいだったな。何を言ったかわからなかった。
女の子の顔が、島田さんに変わっていく。

「どーん」
島田さんは居眠りしていた僕の脇腹にペンを突き、ニコリとした。
「花火の練習」
僕は昼間の夜空に咲いた。
青春
公開:18/09/06 22:49

undoodnu( カントー地方 )

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