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私の故郷の霧屋市は、大正風情が残る美しい街だ。
この街は、某国首都のように霧が起こりやすい。夜から明け方にかけて車の使用が制限されるほどだ。
そして、かの街と同様、凶悪な殺人鬼が、この街にも現れた。
噂だと、正体は女らしい。
被害者の全身を鋭利な刃物で滅多切りにし、目をえぐり四肢を食いちぎるため、女は"女狼"と呼ばれた。
二週間に一人は、好奇心を興した好き者が無惨な姿で発見され、市民は恐怖の深淵に陥れられる。
青い空気が立ち込める夜明け前。私は女狼が一番出没しやすいと言われる時間帯に、急用で外出せざるを得なくなった。
仲間が集まる居酒屋へ向かうが、道中、双眸を赤く輝かせる黒い影に出くわす。長い髪を揺らしながら、近づいて来る。辺りには血の臭いが漂い、影が例の女であることを決定付けた。
女狼と言われるだけあり、逃げる間もなく、腕二本分の距離まで間合いを詰められる。
遠吠えが、街に響いた。
その他
公開:18/09/07 17:55
更新:18/09/17 21:40

加賀守 崇緒( 猫屋敷 )

気まぐれなハチワレ猫です。
頭抱えながら文章を考えてます。
スイカと芋と肉と魚に、お米とお酒、ブドウが好き。
よろしくお願いします。

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