一日三善

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安アパートに一人暮らし、小太りでモテない僕が心がけているのは「一日三善」。
すれ違う人の落し物を拾って手渡す。落ちている空き缶をゴミ箱に収める。倒れた自転車を起こす。
誰も見ていない些細なことでも、僕が良いと思うことを3つ行う。

ある朝、目的地のメモを片手に迷いながら歩く老女を見かけた。僕はすぐさま近くの交番へ導き、若い警察官に彼女を任せた。
滝のような汗をかく僕は職場で引かれたが、今朝の一善に大きな充実感を感じていた。
ところが通勤路で起きた窃盗事件の容疑者として突然身柄を確保されてしまう。遅刻しまいと走る姿が防犯カメラに映っていた。何てことだ!
さらに老女を案内した交番もそんな記録はないという。まさか!

しかし程なく、僕は釈放された。
通勤路のカフェにいる女性店員が今朝の出来事を証言してくれた。僕の一日三善を彼女は見ていたのだ。

間もなく、交番の警察官を装った真犯人が逮捕された。
ミステリー・推理
公開:18/09/04 20:52
更新:18/09/07 23:11

ケイ( 長野 )

ショートストーリー、短編小説を書いています。
noteでも作品紹介しています。​​
​​​​​https://note.com/ksw

テーマは「本」と「旅」です。

2019年3月、ショートショートコンテスト「家族」に応募した『身寄り』がベルモニー賞を受賞しました。(旧名義)
2019年12月、渋谷TSUTAYAショートショートコンテストに応募した『スミレ』が優秀賞を受賞しました。
2020年3月、ショートショートコンテスト「節目」に応募した『誕生会』がベルモニー賞を受賞しました。

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