85.『憧れ』

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 今日は友人と一緒に憧れのゴスペルのライブを観に来た。
 定刻通りに始まったライブだが、一曲目が終わり二曲目でステージ全体を見渡してハッとした。
 最前列の左側でイキイキと歌っている女性が、自分にソックリだったからだ。あまりにも驚いたので思わず友人の肩を叩いた。

 友人は何を今更と言わんばかりに「愛が出演するから観に来てって言ったんでしょ」と私の名前を言った。
 なに、どういうこと?じゃあここにいる私は誰?

「出演するけどどんな感じか客席から観てみたいから付き合ってって言ったのも愛だからね!」
 そう言うと持っていた、ある取説を見せてくれた。

「因みにステージのあんたもここにいるあんたもクローンだよ」

 あぁ、そういえば思い出した。私は父の知り合いのエンジニアの方が作った『憧れ』というタイトルのクローンだった。

 本当の私は今日も自室のPCで、私たち2体を無表情で観ているだろう。
SF
公開:18/09/04 02:56
更新:19/04/30 15:22

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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