呪われたカメラ

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中古でインスタントカメラを買った。変わった品物で、持ち主は気味悪がって手放したと聞いた。
それは賭けだった。

僕が病室に入ると頬を緩ませる彼女は仕事中に倒れ、末期癌を告げられた。一日に何度も嘔吐し、死を願って泣く背中は小さくなっていた。
無防備な表情にカメラを向け、撮影する。驚きと抗議の声を聞きながら、出てきた一枚のフィルムを見た。
そこには、穏やかに笑う年老いた彼女の姿があった。
「これは未来の君だよ」
「私? 私、おばあちゃんになれるの?」
「なれるよ、絶対」
フィルムを抱きしめてこぼす涙は、間違いなく嬉し涙だった。久しぶりの笑顔を見て、抑えきれずに僕も泣いた。
これは老いた姿が写る呪いのカメラだと言われた。予言とは限らない。だが呪いのおかげで彼女は生きる活路を見出したのだ。僕は賭けに勝った。
カメラが自分の手元に来てくれたことに心から感謝しながら、彼女をまた支えていくと心に誓った。
その他
公開:18/09/04 02:08
更新:18/09/04 08:35

ハナヅキアキ

生まれ変わったらジンベエザメになりたい。
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お問い合わせ
hndk.ak@gmail.com

使用写真はすべて自分で撮影しています。

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