演じる

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「もしもし?え?幸子?」
貴之はスマホを手に取り、私の顔を確認する。
「幸子は、今ここにいる、イタズラ電話ですか?」
それから電話の主と二言三言会話をする。ええ、とかはい、とか言ってスマホの画面を見せる。通話中、相手は幸子、すなわち私となっている。
「え?三年後の幸子?」
貴之は驚いた顔をする。未来の私からの電話、らしい。
「そうか、三年後でも夫婦喧嘩は絶えないか、体調は?もう何ともない?それは良かった」
夫は泣き笑いといった表情で電話を切り言った。
「大丈夫、明日の手術は成功する」

私は知っている。その電話はアドレス帳を私の名前に変え、彼の友人が電話をかけていたことを。
看護師さんたちが貴之を愛妻家と呼び、熱い視線を送っていることも。そして貴之がそれに答えるべく急に優しくなったことも。
「ありがとう」
そう言って私は笑う。
その他
公開:18/09/05 19:34

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