宇宙の狭間の移動図書艦/大宇宙標準時08:15

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「『縞模様の湖』、返ってきてたっけ?」
「ああ。ヒ号棚6番T-9」
 全宇宙から休みなく降り注ぐ図書のレファレンスやリクエストは、まず宇宙図書館連合本部で内容を確認した後、処理される。組合に加盟している移動図書艦の蔵書データと照らし合わせた上で振り分けが行われ、各艦へ毎日膨大な出庫依頼目録が送られてくるのだ。効率よくリストのチェックを済ませ、その日の巡航スケジュールと上手くすり合わせるには、優秀な相棒兼助手と珈琲の力が不可欠である。
「『ラダザー星の歩き方』、但し10年以上前の版に限る…?」
「ジフィ山の大噴火で星の環境が一変したのが9年前だ。それ以前の情報が欲しいのだろう。ヨ号棚5番L-3」
「ヨ号棚?開けるの久々だな。…何事もない事を祈ろうか」
 返事代わりに長い尾をゆらりと揺らし、肩を竦めた助手の背を叩いて宥め、気合いとともに書庫へ向かう。いつもと同じ一日が今日も始まろうとしていた。
SF
公開:18/09/05 10:29
更新:18/09/08 02:40
移動図書艦シリーズ

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