一皮むける夏

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「日焼けが痛い~。皮がむけてくる~」
「ふーん」
テレビを見ながら適当に返事をする彼。
小説家志望の彼とは付き合って三年となる。まぁ、彼が小説を書き終えた所を見たことはなかったが。
風呂上がりの肌の日焼け跡に薬を塗り込む。友人から貰ったのだが、なんでも綺麗に一皮むける薬らしい。
「なにそれ」
「皮がむける薬。こう、塗ったら……ほらっ、綺麗にむけた」
薬を塗った所からぺりぺりとむけた私の肌は、すべすべで色も白くなっていた。
「俺にもくれよ」
彼は薬を私の手から引ったくって全身に塗った。
「もう、むいていいかな」
そして右手で左手の浮いた皮をむき始める。
ぺりぺりぺりぺりぺりぺり。
皮は途切れる事なくむかれ続けた。むいても、むいても終わらなかった。
そして最後には彼の姿は跡形もなくなってしまった。
私は友人に電話をした。
『あね、中身のない男だったんじゃね』
確かに、口だけの奴だったけどさ。
ファンタジー
公開:18/09/05 02:15
更新:18/09/05 13:03

sakana

ショートショート好きです
学生やってます。まだ若いのよ、なんて

Twitter @n_ak_as

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