星空

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マリさんは泥棒だ。
その夜、僕らは星が冷たい山の上に来ていた。暖かいコートを着込み、手袋もマフラーもしっかり身につけて、白い息を吐きながら夜空を見上げている。流星を見に来たのだ。
マリさんなら、流星のひとつやふたつ、夜空のまるごとだって盗めるだろう。だけど、僕らはただふたり、手出しができないふりをしてここにいる。

「今夜のこと、どのくらい覚えていられるかな」
マリさんがぽそりと呟く。
「何も盗らないで帰ったら、うまく思い出せなくなりそう」
僕はマフラーをほどいて、マリさんの首に巻きつけた。
「それ、あげる」
ファンタジー
公開:18/11/24 20:29
更新:20/12/31 19:28

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