吾輩は描である

吾輩は描である。名前はまだない。そりゃそうだ。猫じゃなくて描なんだから。
吾輩、昔は猫であった。しかし人の姿に憧れ、人になりたいと願った。獣の手を人の手に変えたかった。
するとある日、吾輩は描になっていた。さてどうしよう。
描は食事を必要としない。なのに出すものは出すのだ。
何を出すかって？作品だよ。暇な時は落描きをして、仕事の時はイラストレーターとして描く。
昔は消しカスも出していたがデジタルが主流の今はそれもない。
吾輩、描になって思ったことは受肉したいということだ。
そして思い切ってそれを悪魔に頼むことにした。吾輩は描だ。魔法陣を描くことは容易い。
現れた悪魔は代償に魂を差し出せと言ってきた。いいとも。吾輩、昔は猫だったのだ。魂は九つある。一つくれてやっても問題はない。
こうして吾輩は受肉をした。そんな吾輩が今、どうしているかって？
猫の手も借りたい漫画家のアシスタントをしている。