骨の拾い合い

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“家族葬ですのでお気遣いは無用です”

老齢で寿命を迎えた父が亡くなり、葬儀にあたって自分の職場に対してそう気遣った。
母に先立たれ、その晩年を庭木の手入れと家庭菜園に十数年費やした父は、やっと母に会える、と病床の天井に、まるでその先に天国が見えているかのように、静謐な声で語った。
お前はまだ来るなよ、と言葉を締め、そしてもうその口が開くことはなかった。
母も父もそして自分も兄弟がおらず、見送る側は独り身の俺が唯一人で。
火葬場で父のものだった焼け崩れた骨を拾い上げながら、ふと思った。こうして天涯孤独になった我が身の骨はいったい誰が拾ってくれるのだろうか、と。
その時「ワン!」と足元で唸るように吠えた我が家の大きなセントバーナードが尾をブンとひと振る。
「ハハッ…お前か。じゃあ任せたぞ」
お前が先ならその骨も我が家の墓に入れてやるからな、と約束し、今はまだ温かなその毛並みへと手を伸ばす。
ファンタジー
公開:18/11/24 14:10
更新:18/11/26 03:32

Kato( 愛知県 )

ヘルシェイク矢野のことを考えてたりします
でも生粋の秦佐和子さん推しです

名作絵画ショートショートコンテスト
「探し物は北オーストリアのどこかに…」入選

働きたい会社ショートショートコンテスト
「チェアー効果」入選

ありがとうございます

 

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