Cyclopes社のインスタントカメラ

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 大きな倉庫のような所だ。骨董市をやっている。僕はからくりカメラの棚を物色し、その中の一つを手にとってみた。
 それは、鋏をもぎ取られた蟹にそっくりなインスタントカメラで、Cyclopesというロゴが入っていた。
 シャッターを押すと、鋏を失った二本の腕が伸び、本体が上下に分かれた。内部には白濁したピンポン玉が嵌め込まれているらしかった。
 カメラを棚に戻した時、双眼鏡が泣いていたのだが。僕は見て見ぬふりをしてしまった。
「もう、誰も僕を求めない」
 と言ったら、
「ヘリを呼んでやる」
と、中佐が怒鳴った。
 そして中佐は、一旦、緑色の髪ゴムを外して口に咥えると、髪を一振りし、より高い位置で髪を束ねなおした。

 第一ヘリポートはドクターヘリ専用だったので、僕達は川原まで歩いてヘリを待った。足の長い烏がしきりと川を突いていた。僕はずっと、双眼鏡と白濁したピンポン玉のことばかり考えていた。
青春
公開:18/11/25 17:45
更新:18/11/28 18:56

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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