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大きな店の裏、そこへいく途中には道無き登山道があって、自分は子供をつれてそこを上っていく。いや、その子供が自分だったのかもしれない。峠の正面に東京タワーが大きくみえた。で、東海道線が来たので実家に戻る。展望車のお稚児さん達の石蹴り遊びや、連結部での騒動はいいとして、実家では、裏の水路に巨大な毛の無い毛虫がごろごろしていた。夏なのだ。
好きだった学校の先生が、寝室の二階でこみいった話をしているのと、叔母が、花柄のポットから注いだ麦茶を飲んでいるところとを、山頂から同時に見ていた。勝手口が開いていて、長いレースののれんがたなびいている。テーブルクロスは青いチェックで、ベッドは乱れていた。
その両方の現場に立ち会っていたピン子が、木立の間から盗み聞きして「まっ!」という表情をつくるという演技が、素晴しかった。
「さすがはピン子だよ」と、父がしきりと感心していた。全て僕が産まれる前の話だ。
好きだった学校の先生が、寝室の二階でこみいった話をしているのと、叔母が、花柄のポットから注いだ麦茶を飲んでいるところとを、山頂から同時に見ていた。勝手口が開いていて、長いレースののれんがたなびいている。テーブルクロスは青いチェックで、ベッドは乱れていた。
その両方の現場に立ち会っていたピン子が、木立の間から盗み聞きして「まっ!」という表情をつくるという演技が、素晴しかった。
「さすがはピン子だよ」と、父がしきりと感心していた。全て僕が産まれる前の話だ。
その他
公開:18/11/25 07:24
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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