原稿

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マリさんは泥棒だ。
ある朝、マリさんが満面の笑みで僕に茶封筒を渡した。それは、漫画の原稿だった。僕の大好きな連載ものの…。
「バッ、ダッ、ゴッ、なんて物を盗んだんだ!」
思わず大声をあげてしまった。
マリさんは驚いた顔をしている。
「早く続きが読みたいって言ってたじゃん」
「ダメ!ダメ!これはダメ!この世にはマリーアントワネットの首飾りよりも大事な物があるんだよ!早く返さなきゃ、印刷が間に合わない!!」
僕は封筒をマリさんの胸に押し当てた。
マリさんは少し悲しそうな顔をして青空を見上げる。こんな明るい時間じゃこっそり返すのは無理か。
「わかった。俺が出版社まで届けてくる。道で落ちてたのを拾ったって言う」
マリさんはムッとした顔をして、原稿を抱えて窓から飛び出した。

あー、僕のために盗ってきてくれたのか。ありがとうくらい言っても良かったかな。
ファンタジー
公開:18/11/22 21:20
更新:18/11/22 21:29

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