1ダースのピンポン玉

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 そこには、スーパーもあったはずだと、突き当たりの階段室で友人と話していた。僕は、足を洗うつもりで海に入ったら、離岸流で沖のブイまで流されてしまい、ようやく泳いで戻ってきた後だったので息が上がっていた。友人もびしょ濡れだったが、それは彼自身の身体からの分泌物のためだった。
 スーパーは図書館の隣で、完全一方通行だという。何も買わなくても、レジを通過しなければ出られない仕組みになっていて、途中で気が変わって、買おうとしていたものを棚に戻した友人は、吊るし上げられたそうだ。僕は、たしかUCLAにそんな店があったような気がする、と言った。その時は、ピンポン玉を1ダース買うように命じられていたのだ。
 スーパーは、百貨店の最上階にあったが、もう照明も落ちていた。そこで、誰かに会ったのだが忘れてしまった。もう、夜になっていた。しかし、その後、僕は置き去りにされ、そのことさえも忘れてしまっていた。
青春
公開:18/11/22 20:46

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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