カレー

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マリさんは泥棒だ。
その日、マリさんは歌いながら台所に立っていた。珍しい。いつもは僕のごはんを食べるばっかりなのに。
どうして料理をする気になったのか訊くと「世界一のシェフのレシピを盗んだから」だと。
そんなことまで出来るのか、と僕は感心しきった。そして安心して勉強を続けた。
楽しげな声と香ばしい香りが鼻先に漂う。誰かが料理をしてくれるって嬉しいものだなぁと安らかな気持ちで机に向かった。

ひと段落したところで僕が台所に行くとすっかり出来上がったカレーがあった。美味しい。ちゃんと美味しい。
台所には野菜くずと水が飛び散っていたけれど、包丁だけは洗って仕舞われていた。

マリさんは食卓につっぷして眠っている。
「慣れないことをするからだよ」
背中にそっと毛布をかけた。
僕は机に戻り、いつになく課題がはかどった。
ファンタジー
公開:18/11/22 20:21
更新:18/11/26 19:45

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