母ちゃん!

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急に腹が痛くなり、駅のトイレで用を足した。
「紙がねえじゃん!」
母ちゃんがトレイの上からヌッと顔出した。
「ほらよ」
とトイレットペーパーを投げる。
「母ちゃん!」
俺は急ぎ尻を拭き、トイレを後にして走る。
(やべ、会社に遅刻しそうだ)
「タイムカードは任しときな」
黒い影が凄いスピードで俺を追い越した。
「母ちゃん!」
会社に着くと、既にタイムカードは押してあった。俺はデスクにつき、鞄から書類を…
「ない!」
その時、窓の外から弾丸のようにデスクに書類が飛んできた。隣のビルの屋上の人影は
「母ちゃん!」

仕事を終え、俺は彼女と並木道を歩いていた。足を止め、彼女を見つめると彼女も俺を見つめ返す。(初キッスか?)
目の前をヒラリとメモが通過した。

『歯、磨いたか』

どこからか歯磨きガムが飛んできて俺はキャッチした。樹の上をザザッと人影が走る。

「グッドラーック」

「母ちゃん!」
その他
公開:18/11/22 14:28
家族

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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