盗まれて

2
5

マリさんは泥棒だ。
僕には理解出来ない世界に住んでいる。夜中に出かけて、何日も連絡なしに帰ってこない。僕はぼろぼろだ。
いつからか、マリさんと連絡がつかないことに焦りと不安を感じるようになってしまった。
こんな気持ちをどうしたらいいかわからなくて、そこはかとな〜くケイタに相談したら「友よ〜、それが恋だ〜〜」とオペラ風に歌って消えた。役にたたねぇな。
家に帰るとマリさんが本を読んでいた。僕はぶっきらぼうに言った。
「あのさ、盗まれた心はどうやったら元に戻るの?」
マリさんは驚いた顔で僕を見つめ返した。
「盗まれた心とか、欠けちゃった心を元に戻すことなんて、泥棒には出来ないよ。だけど、慰め合ったり、悲しいことを忘れることなら、みんな出来るでしょ」
僕はマリさんを抱きしめた。出来るだけ優しく、力いっぱいに。
この世の全てからマリさんを盗んで、隠してしまいたい。
ファンタジー
公開:18/11/22 13:46
更新:18/11/26 19:53

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容