カーテンコール

いつもの朝
込み合う車内と眠そうなアナウンス
三つ後の駅から
時計の音つれて乗り込んで来る君
退屈な舞台にスポットライトが当たる

それから二駅
ちょっと間抜けな一人芝居
君の立ち位置に透明な幕が下りていて
幕越しの君をガラス越しに観察するピエロな僕
どんなに乗客が動いても
僕は数秒で君を見付ける
改札を出て同じ方へ行く数人からも
君は僕を探せない

見慣れた坂に差し掛かると
わざと歩調をゆるめる
上りきった所で君が追い付く
『おはよう』の声に体半分振り向いて
ここでクライマックス
四文字の台詞に全神経が集中する

棒読みの『オハヨウ』に無邪気な笑顔を投げ
君は仲良し達の所へ行ってしまう
笑顔が溜息に変わって脳内で溶ける
振り向いた体と振り掛けた手を引き戻す

以上　タイトルは『ビビリの片想い』
主演は僕
監督と脚本演出とついでに観客も僕
君を相手役に指名するには
僕はまだまだ演技力不足だ