あのとき助けていただいた……
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ある日突然、赤毛の少女が我が家を訪ねてきた。
ずっと会いたかったのだと泣き声を漏らす彼女は、明らかに初対面の相手だ。
「あなたは命の恩人です。他の兄妹が歯で噛み砕かれたり飲み込まれたりゴミ袋に捨てられたりと悲惨な死に方をしたなか、あなただけは私を救ってくれました」
少女は玄関先で思い出を語り涙を流す。
こちらは彼女を助けた覚えはなく、兄弟が亡くなったという悲惨な現場にも遭遇したことがない。
今すぐにでも扉を閉めて知らないふりをしたいが、あまり刺激しないように優しい声で話しかけた。
「人違いしてるんじゃないか?」
「いいえ間違いありません。出会ったのは夏の日、山梨にあるおばあさまの家の庭……」
確かに祖母の家は山梨にある。
そんな個人情報まで手に入れているのかと慄くと、彼女が一歩前に踏み出し――
「私は、あなたが庭に飛ばしたスイカの種です」
ふわりと、夏の日を思い出す甘い香りがしたのだった。
ずっと会いたかったのだと泣き声を漏らす彼女は、明らかに初対面の相手だ。
「あなたは命の恩人です。他の兄妹が歯で噛み砕かれたり飲み込まれたりゴミ袋に捨てられたりと悲惨な死に方をしたなか、あなただけは私を救ってくれました」
少女は玄関先で思い出を語り涙を流す。
こちらは彼女を助けた覚えはなく、兄弟が亡くなったという悲惨な現場にも遭遇したことがない。
今すぐにでも扉を閉めて知らないふりをしたいが、あまり刺激しないように優しい声で話しかけた。
「人違いしてるんじゃないか?」
「いいえ間違いありません。出会ったのは夏の日、山梨にあるおばあさまの家の庭……」
確かに祖母の家は山梨にある。
そんな個人情報まで手に入れているのかと慄くと、彼女が一歩前に踏み出し――
「私は、あなたが庭に飛ばしたスイカの種です」
ふわりと、夏の日を思い出す甘い香りがしたのだった。
ファンタジー
公開:18/11/23 21:45
Twitter@N_natsuo
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