普通の幸せ

天使は私に言った。
あなたには三つの選択肢があります。
不幸、普通、幸福
どれを選びますか。
私は悩んだ末、普通を選んだ。

数年後、私はどこにでもある片田舎でごく普通の両親から生まれた。
ごく普通に幼少期を過ごし、ごく普通の普通科の学生になった。
卒業後はごく普通の会社員になり、ごく普通に恋愛をし、ごく普通に結婚をした。

二年後、ごく普通の子供が生まれた。
子供は私に似てごく普通の頭の持ち主だった。

二十年後、子供たちが社会人になり、ごく普通に私達の元を離れた。
そして私と妻は急に静かになった家でふたりっきりになった。

三十年後、私はごく普通に病気になり、ごく普通に寝たきりになった。それを聞いた息子たちはごく普通に家へ戻って来た。

五年後、ごく普通に私は家族に見守られながら息を引き取った。

「どうでしたか」
天使は私に聞いた。
私は「まあ、普通だったよ」と空を眺めながら答えた。