ビオラ協奏曲「三色菫の暁」～viola　e　viola

頭の上を、秋がつらつら撫でていく。
～♫♬～♩～　～♪
ヴィヴァルディ『四季』より第３楽章『秋』
日本を発つ時、着信に設定された。
『この曲のビオラ、好きなの。私の名前と同じ語源って説もあるし』
推定３０回は聞いたけど、その声が楽しいから、私も微笑う。
徹夜明けの思考を音符にかき混ぜられながら、くたくたのスウェットに上着を引っ掛けベランダへ。

銀を撒いたミッドナイトブルーから紫、東雲を段々に、ゴールデンサンライトへ向かうグラデーションを、大抵私は、机の前でぼんやり見過ごす。
――あっちはそろそろ寝支度かな。
まだ昨夜にいる彼女が、今朝の私を起こす。８時間の差が生み出すマジック。
置き土産のプチモルフォが、丁度暁とよく似た色をして、プランターに舞う。ビオラ。三色菫。遊蝶花。
放射する光の矢と、冴えた空気が全身を洗う。
彼女の一日が終わり、私の一日が始まる。
♫♩～　♬．

「……久し振り」