おじいさんと豆の蔓

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突き抜けるような青空だった。キイとドアが開いておじいさんが小さな家から小さな庭に出た。小さな庭では木や花が水をおくれよと待っていた。おじいさんは「よしよし」と水を撒く。
植えたばかりの豆の蔓が支柱に絡まれずにいた。おじいさんが「ほれほれ」と蔓を絡ませようとすると、蔓はじゃれておじいさんの足に巻き付いた。「これこれ」おじいさんが笑うと、豆の蔓は嬉しそうにもっとぐるぐる巻き付き、ぐんぐん伸びておじいさんを持ち上げた。「あれあれ」おじいさんは空高く持ち上げられて、自分は鳥になったみたいだと思った。
豆の蔓はおじいさんを連れて山を越え、海を渡り、「ほうほう」おじいさんは初めて海の向こうを見た。
「やれやれ」やがて小さな家の小さな庭に戻ってきたおじいさんは、やっぱりこの小さな庭が一番好きだなと思い、でも冒険も楽しかったと豆の蔓を見ると、豆の蔓はくるんと弾み、おじいさんは「うんうん」と頷いた。
その他
公開:18/11/23 09:51
更新:18/11/28 00:01

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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