12
10
帰りの車の中、父に電話がきた。父は運転しながら電話を受けている。仕事の話らしい。
助手席で、僕はラジオのボリュームを下げ、狭い路地に、定期的に挟み込まれている空地の枯草が、赤みがかった朝日と同じ角度で吹く風になぶられているのを、幾つも見送っていた。
すると、冬の朝、父が電話をしながら運転する車の助手席から、こんな景色を眺める夢を見たことがあった事に気づき、同時に、とてつもなく嫌な感情が、胸にのしかかってきたのだった。
「この続きは、どうなるんだっけ…」
不安にかられながら、僕は必死で夢の続きを思い出そうとした。だが、それがとても嫌な夢だったということ以外には、何も思い出せなかった。
父が電話を終えた。
僕は少しほっとして、ラジオのボリュームを上げようとした。その時、窓の外に、錆びたトタンの看板が現れた。
『日本染色工業研究会社』
僕は、まだ夢が終わっていないことに気づいた。
助手席で、僕はラジオのボリュームを下げ、狭い路地に、定期的に挟み込まれている空地の枯草が、赤みがかった朝日と同じ角度で吹く風になぶられているのを、幾つも見送っていた。
すると、冬の朝、父が電話をしながら運転する車の助手席から、こんな景色を眺める夢を見たことがあった事に気づき、同時に、とてつもなく嫌な感情が、胸にのしかかってきたのだった。
「この続きは、どうなるんだっけ…」
不安にかられながら、僕は必死で夢の続きを思い出そうとした。だが、それがとても嫌な夢だったということ以外には、何も思い出せなかった。
父が電話を終えた。
僕は少しほっとして、ラジオのボリュームを上げようとした。その時、窓の外に、錆びたトタンの看板が現れた。
『日本染色工業研究会社』
僕は、まだ夢が終わっていないことに気づいた。
その他
公開:18/11/21 11:00
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
ログインするとコメントを投稿できます