死人に梔子(くちなし)

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花はいい
花はきれいだ
花をみると おこるのをわすれる
花をみて かんがえてみる

下手くそな詩。
七歳の作にしちゃ穿ってるが。

目前の血溜りに、梔子の実一つ。
『口を挟むな』
床に散らばる百八十一子(もく)の黒星。

「那智(なち)」
閉てた襖の裏、細い衣擦れ。
「流石、名人蛤雪(こうせつ)だったな」
開かない襖の裏。拳が畳を打つ。
裏返した盤の表。
十九×十九点を白黒の意志が喰い合う戦場。

なぁ、那智。
そうして敗ける度、寒い世界に籠るお前。
考えた事あるか?
そういうお前に、敗けっ放しの俺の気持ち。
三百六十一でも足らない。
雪にも月にも成れない、梔子の実の気持ち。

「……次は死んでも勝つ」
血溜りの由来。
命懸ける覚悟。

「桑島。相手」
ぱちん。盤上に黒一子。
死人(四×二)に、口無しか。
二厘と三厘、七分も足して。
次は二重(二十)丸の大輪を開いてみせろ。

――ぱちん。
青春
公開:18/11/21 05:03

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

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