県ケンパ

路上に〇を描いて、子供たちがケンケンパをしている。
「北海道、青森、秋田岩手」
なぜか、県名を声に出しながら、跳んでいる。
今時の子供でもするんだと何だか嬉しくなった。
「おじさんにもやらせてよ」
「いいけど、落ちないように気をつけて。死ぬからね」
自分が子供のときも線の上を歩く遊びで落ちたらワニに食べられるなんていう設定にしていたなあ。
最初の〇に片足で立ってみた。冷たい。まるで雪のようだ。
次に跳んだ〇からも冷気が伝わってくる。まさか、北海道、青森だから？
次の〇へ跳ぼうとしたとき、雪の上のように足が滑った。
「おじさん、気をつけて」
〇の外に足をついてしまった。その足が水の中に沈んだ。
太平洋側だ。
足がつかない。陸のすぐ横なのに、なぜ深い？
服が邪魔で泳げない。身体が沈んでいく。
「そこは日本海溝だから」
子供たちに教えられても手遅れだった。