真珠

マリさんは泥棒だ。
マリさんがとても高価な宝石を盗んできた。マリーアントワネットの首飾りと竜宮に眠っていた真珠。その真珠をイヤリングに仕立てて、マリさんはネックレスとセットにして博物館に届けるという。
「どうして、誰の為に宝石を盗んだり届けたりしてるの？」
マリさんは嬉しそうに笑って言った。
「誰に頼まれたかは秘密だけど、この首飾りと耳飾りの真珠は温かい海で一緒に育ったらものなんだよ。長い間離れ離れになっていたけど、また同じ所にいられたらって願ったひとがいたんだ」
誰がそんなことを考えたんだろう。真珠がマリさんに語ったのか、真珠を育てた貝がマリさんに語ったのか。

マリさんはひらりと身を翻して、窓から姿を消した。
今度はいつ帰ってくるのか。すぐに帰ってくるだろうけど。
マリさんはいつも誰に会って何を話すの？
僕はマリさんを待ちながら、いつも通りに勉強をするだけだ。