おかえり

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マリさんは泥棒だ。
この数ヶ月、マリさんが帰ってこない。遠いところで何か大切な物を盗んでいるに違いない。きっと元気にしている。僕は何度も自分に言い聞かせた。マリさんは誰かに捕まったりしないし、ほかに居心地のいい場所を見つけた訳でもないはずだ。
いつもそう言い聞かせて眠りにつき、朝、マリさんが目の前にいるのを願って起きる。
「ただいま」
もう百回は繰り返されたそら耳に今朝も返事をする。
「おかえり」
そら耳は僕の腕を引っぱって、「おみやげがあるよ」と言った。
マリさんだった。
「会いたかった」
考えるよりも先に言葉が出た。
「ずっと帰ってくるのを待ってたよ。何かあったんじゃないかって心配してたよ」
マリさんはかわらない笑顔を僕に向ける。
「待っててくれて、とっても幸せ」
マリさんは僕の首にマリーアントワネットの首飾りをかけた。
こんな物を盗んで、誰かに追われたらどうするんだよ。
ファンタジー
公開:18/11/21 21:53

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