理想

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世界で一番美しい丘の上で、蘇って神になった私と、私を殺した男が対峙していた。男は少しうつむいた。
「少しだけ分かったかも知れない。この少しを理解するのに何千年もかかってしまった。普通の人間のように死んでいたら、きっと一生分からないままだった。お前の世界を長いこと旅して気がついた。お前は神になって、人と人との苦しみのない世界を作った。この世界にも事故や病気や死はあるが、人が人を傷つけたりして苦しめることはない。
お前はいつも人より秀でていた。そして尚、自らに理想を課していた。輝かしい功績を必ず手にしていた。お前は俺のような嫉妬にまみれた男の苦しみは知らなかったし、俺はお前の純粋な理想を理解できなかった」
男は顔を上げて言った。
「すまなかった。お前は理想を俺たちと分かち合いたかったんだな。だけど、俺はそれについていけなかったんだ。すまなかった」
私は、言葉を失った。
男は意識を失って倒れた。
ファンタジー
公開:18/11/21 12:35

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