ぼくの友だち

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転校生の頭にスイッチがある。グッと押し込んだら引っ込むタイプの赤いスイッチだ。具合を悪くした彼を保健室に連れて行く時、僕は見てしまった。
「内緒にしてね」
お願いされたから僕は内緒にしていた。なんとなく面倒を見ていたら、気がついたら仲良くなっていた。
「秘密にしてね」
たまに彼ははにかむように確認してきた。正直者で素直な彼は、大人になっても気の置けない親友でいてくれた。やがて僕の妹と交際を始め、婚約して義理の兄弟になった。
そんな矢先、妹が事故に遭った。横断歩道でトラックにはねられた。意識不明の重体だ。僕らが駆けつけた時にはもう、機械に繋がられて生かされていた。
「秘密だよ」
彼は僕に頭のスイッチを押してと頼んだ。
「約束だからね」
妹は奇跡的に回復した。後遺症もなく、事故そのものがなかったみたいに。お見舞いは僕だけだ。
初めから一人だ。でも、なんでかな。
とても寂しい気持ちになるんだ。
SF
公開:18/11/19 18:05

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
a.co/1VIyjHz

『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

こちらで写真を紹介、ハガキにと販売しております!
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