蠅と塵取と甲虫

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 探し物は黒くて、小さくて、平べったくて、多分もう動かない。だから蝿がたかっているはずだ。それは、蝿に隠れてしまうほど小さいというので、とりあえずは、蝿を見つけ出すのが先決だった。
 ところが、こともあろうに、道いっぱいにカブトムシが這っていて、見つけにくいことこの上ない。しかも、やたらと飛んでいる蝿ばかりで、たかっている蠅なんて一匹も見当たらない。
 兎にも角にも必死で探していたら、あろうことか、カブトムシを四匹、踏み潰してしまった。黒くて小さくて、割れて平らな隙間から、透明な翅が四枚はみだしている。
 ともかく、塵取で塵取に死骸を載せようとしたら、なんと、各一匹計二匹しかのらない。見た目も、ものすごくグロテスクだから、早く処分してしまいたいのに、生ごみの回収時間はとっくに過ぎている。
 探し物は見つからないまま、両手にちりとり、足元には無数のカブトムシ。そして周囲に蠅が集まり始める。
その他
公開:18/11/19 13:25

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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