観光バス

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 また、観光バス。これで15台目だ。僕は自転車を降り、崖に背中を押し付けてバスを通す。路上に張っていた蜘蛛の巣や、降りしきる枯れ葉に塗れた僕を、子供たちが指差していく。

 展望風呂から見える紅葉が懐かしくなり、この山の頂上にある野外活動センターを目指しているのだが、もし宿泊訓練があるのだとしたら、一般宿泊は断られるかもしれない…

 やっと到着した駐車場には、15台のバスが、曇り一つない車体を連ねていた。
 ハンドル幅ギリギリのバスの隙間を抜けると、谷向こうの紅葉が眼前に広がった。僕は息を呑んだ。紅葉にではない。そこにあるはずの建物が無いのだ。
 駐車場の端が谷に向かって不定形に抉れ、錆びたバリケードが並んでいる。
 崖崩れ…
 背後でプシューっという音がした。振り返ると15台のバスの扉が一斉に開き、バスの隙間は扉で完全に塞がれていた。
 やがて、バスの中を、子供たちの影が動き始めた。
ホラー
公開:18/11/20 13:13
更新:18/11/20 13:36

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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