空中分解

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例えば友達と会話をしていている時、雑音に混じって放ったはずの言葉が相手に届かず私の目の前で空中分解を起こすことがある。散らばった言葉たちは形を失って消えていく。それは存在しなかったことと同じだった。なぜか私の言葉はあまり人には届かない。

今日も私の言葉が届かずバラバラになって風に飛ばされてしまった。
そんな言葉たちをよそに友達は自分の話をしている。もしかしたら私の言葉はいらなかったのかもしれない。
夜中、寂しくなってマンションの屋上で大声で叫んだ。何処かに届く人がいるんじゃないかと思い言いたいことをとにかく叫んだ。

翌日、道を歩いていたら体に言葉が刺さいる人を見つけた。よく見ると私が夜中に叫んだ言葉だ。声をかけたら、共感してくれたらしくとても感謝された。
私は刺さっている言葉を抜き取り、その人に差し出した。その言葉は宙を舞ってその人の耳の中に吸収されていった。涙が止まらなかった。
その他
公開:18/11/20 12:07

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