あめの便り

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新しい国での暮らしにもだいぶ慣れた頃、国府から民への贈り物として、小瓶をひとつ貰った。
掌に包み隠せる程の大きさで、中で透明な液体がちゃぽんと揺れる。
飲み物ですか、と尋ねると、
原液です、と返された。
大事な方にお便りを出せますよ。

私はさっそく、故郷にのこしてきた娘に手紙を書くことにした。
出立が慌ただしかった為、娘には伝えたいことが山ほどあると思えたのに、いざペンを握ってみると、紙の上に表れた詞は二言だった。

大好きよ。
元気でね。

小瓶のコルクを抜く。
細く丸めた手紙を中に詰め込むと、小さな泡に包まれながら、手紙はみる間に液中に溶けて見えなくなった。それを教えられた通り、雲ヶ淵から外へと振り撒いた。

頬に滴を感じ、リサは空を仰いだ。眩い日差しの中、驚くほど温かい雨が降り注いでいる。
「ママ?」
頷くように強まる雨足。
全身に浴びるがまま、リサは微笑んだ。

私もよ。
ファンタジー
公開:18/11/20 08:24
更新:19/07/11 03:45

rantan

読んでくださる方の心の隅に
すこしでも灯れたら幸せです。
よろしくお願いいたします(*´ー`*)

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