特別な一皿

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私が子供の頃はどの家にも特別な一皿は存在していた。
我が家の場合、それは夕食後に出される一皿だった。
夕方、家族皆で仏壇に手を合わせる。その後で仏壇のお皿の上に載ってあるお菓子や果物を回収し、夕食後に食べるのだ。
私はこの特別な一皿が大好きだった。何故か普通に店で買って食べるより美味しく感じる。
そのことを疑問に思った私は母に聞いてみた。
「それはね、ご先祖様達がこのお皿に『おいしくな~れおいしくな~れ』って魔法をかけてくれているからよ」
当時の私は母のその言葉を信じていなかった。
でも、今なら信じられる。
だって孫やひ孫達が、私が子供の頃やったように仏壇に手を合わせては特別な一皿に手を伸ばす。
美味しそうにお菓子や果物を食べる子供達を見て、私は隣にいる両親や祖父母、ご先祖の皆と一緒に仏壇の中から『おいしくな~れおいしくな~れ』と魔法をかけた。
どうか、この笑顔がいつまでも続きますように。
公開:18/11/19 18:51

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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