潜む愛憎

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躊躇う一歩をいつ踏み出すかを、じっと眺めていた。木枯らしが頬を次第に冷たくしていこうとも。
そこはかつて父親が通り魔に殺された場所。彼女は犯人を見ていたはずだった。
あれから数年。僕は彼女をいつも観察している。あの日の怯えた様子が忘れられない。その姿を自分だけのものにしたくて彼女に近づいた。意外に容易くかった。彼女は何故僕を信用したのか。僕にはわからない。
「あの道の向こうにいてください」
ある日、電話がかかってきただから僕は待っていた。
ゆっくり近づいて来た彼女は言った。
「悪夢を見せてあげる」
彼女は自分の首筋にナイフを向けた。それはあっという間で、血が辺りに飛び散った。
僕は発狂する。僕の望みはこれじゃない。彼女はあの日を覚えていた。
彼女は僕の支えだった。心の均衡を保つための。僕は彼女の手からナイフを奪い、自らを無心に刺し続け果てた。
ミステリー・推理
公開:18/11/18 02:14
更新:19/01/05 17:59
ミステリー 愛憎

( ネットの海 )

思いついた時に閃きと共に。
意識しているのは難解な言葉を使わず、端的に。

 

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