憂いなき楽園

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神になる前、私は人間だった。その人生の最後で、私は五人の男に殺され埋められた。
そのうちの一人が目の前の穴の中にいる。
出来る限りの穏やかな声で話しかけた。
「私がどうしてこの世界を作ったかわかるか?どうしてこの世界で一番美しい土地に私達の故郷の街を移したのかわかるか?私には愛しい故郷だ。お前も何者にも代えられない幼馴染だ。妻よりも信じていたのに、お前は妻に嫉妬して私達を陥れた」
そこまで言って、声が詰まった。そうだ。友情も愛情の一つであるならば、私は一人の人間として妻よりもこの男を愛していた。
「憂いなき楽園を作りたかった。人殺しなどない世界を夢見た。それを見せつけて、お前がどれだけ愚かか分からせたかった。お前たちは死なない。私が許す日まで、お前たちは生き続ける」
男は目をつむり、耳を塞いだ。私は男の心に直接言葉を送る。
「私の悲しみと喪失、そして慈悲を理解するまで、お前は死なない」
ファンタジー
公開:18/11/17 20:31
更新:18/11/17 20:48

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