137.『長い夢を観ているのね』

うちのクラスに転校生がやって来た！色が白く目がぱっちりで睫毛も長くまるでおとぎ話のアリスみたいで、噂を聞き付けた他のクラスの男子も早速休み時間ごとに見に来る始末だ。
しかしある時その子の複雑な事情を知ってしまった。それはネットでたまたま見つけた記事が元だった。その記事によると7年前にT県で惨殺された一家の唯一の生き残りの女の子が今回転校してきたA美らしかった。それを知った時僕の背中には何か得体の知れないものが走った。が、それは気のせいだと自分に言い聞かせた。A美は男子が世間話で笑っていると必ず話の中に入ってきてその笑顔には皆が癒された。中でも笑い上戸のY彦のことが気に入ったらしく『Yくんの笑顔は最高だね‼』と言うのが口癖だった。そんなある日事件は起こった。屋上で寝ていたYが落ちて木の下で死んだのだ。何故落ちたのかは誰もわからなかったがA美だけが『きっと長い夢を観ているのね』と小さく呟いた。