ことりっぷるるるぶの歩き方ガイド(抜粋)

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『バスを下りるとひんやりとした空気に包まれた。思いっきり深呼吸。さっきまで不機嫌だった彼氏も、鼻の穴おっぴろげて、お・い・し・い・って笑ってる。
 旅のスペシャリストを気取っている私たちには、お定まりの旅館なんてオヨビデナイ。ここはいっちょ、誰も知らない隠れ里にトリップしたいぞっ。
 いままでどんなガイドブックだって見向きもしなかった宿。風の噂では、
「え? これが風呂!?」なんてサプライズは序の口だとか。
 ボール紙みたいなヨレヨレの道を、巡礼の人々が、切り絵みたいに通りすぎる。静かで不思議な人達。
 彼氏ったら行列が行き過ぎるまで頭を下げているんだもの。
「臆病者!」ってからかったら、怒髪天で、追いかけてきた。
 捕まえてごらんなさい!
 道を外れて、私はちょうちょ。彼氏はヤンマ。
 ヒラヒラスイスイ。蔦やシダをかきわけて、薮漕ぎすること数時間。無住寺の宿坊までは、残り八里の石畳だ』
その他
公開:18/11/17 16:13
更新:18/11/17 16:41

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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