泣き面にファストパス

大誤算だ。家族サービスのつもりで連れてきた舞浜の夢の国。しかし、どこも人、人、人……。アトラクションはどこも二時間待ち。ご飯を食べるにはテーブルが空いていない。そして子どもが好きなキャラクターが踊るパレードのエリアはすでに場所取りされていて、我々の座れる場所はなかった。
『開園二時間前には並びな、ランドをなめたらあかんで』
姉さんの言葉が蘇る。寝る時間を惜しんだのが間違いだったのだ。
「パパー！獏太郎のハチミツハントやりたいー！！」
疲れや不満が爆発し、娘は泣き出してしまった。妻も途方にくれ呆然としている。しかしハチミツハントは人気アトラクション。娘にあの長い行列、耐えられるとはとても……。
「ほらよ」
その時、一枚のファストパスが手渡された。目の前には獏太郎の着ぐるみキャラがいた。でも、俺には分かった。
「姉さ……」
「家族サービス、頑張りな」
親指を立て、獏太郎は夢の国に消えていった。