先頭車両の May I help you?

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 10-15・16|17 という切符を持って、僕は先輩を待っていた。先輩は野球部で、僕は天文部だったので、なぜそういうめぐり合わせになったのか分からない。
 時間になっても先輩は現れなかった。
 僕は一人で改札を通り、三両目の一番前の扉から乗り込んで、ベンチシートに座った。先輩はいなかった。
 発車の寸前、僕はホームへ降りて、先頭車両へ走った。約束を思い出したのだ。
 先頭車両は10号車の札をつけたバスだった。タラップを駆け上がり、席を探した。それは三人がけで、先輩が窓際の16に座っていた。
「おそくなりました」と帽子を脱いだが、先輩は窓の外の17の人と話し込んでいた。そして真ん中の「・」の席には、スケット外国人がユニフォームのまま窮屈に座っていて、ノートに万葉仮名を書いては首を捻っている。
 僕が、May I help you? を噛み締めている間に、バスは熱川方面に向かって走り始めた。
青春
公開:18/11/18 16:03
更新:18/11/18 16:07

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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