踏切

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踏切が見える。線路もないのに、カンカンと音を立てるあの信号機だけが、車道の横に静かにたっている。よくみればそれは残骸で、廃棄物かオブジェなのか判別できなかった。
踏切を懐かしく思う過去はない。だけど無性に物悲しく、心は過去に閉ざされたままだ。
友人に会いたい。そう思い始めたらそれは予兆だ。あの頃のみんなに会いたい。それなりに悩みも葛藤も抱えつつ、腹の底から笑いあえたあの時間に戻りたい。
無論不可能で、叶わなくて、届かない。心ばかりが置き去りで、輪に入れず立ち尽くす他はない。
戻れない、時間は不可逆だ。思い出は思い出だ。
なにより、あの子がいない。
どこにもいない、あの日彼女を置き去りに、私たちだけが歳をとった。
あの子に会いたい。そう思い始めたら、立ち止まる。どこに行ってもあの子はいない。心の中にいるのだと、蹲って探す他、私には術がない。
何年たっても変わらない。また12月がやってくる。
青春
公開:18/11/16 16:44

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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