お題「特別な一皿」

1
4

ホールには多くの評議員が集められていた。
彼らは真っ白なテーブルクロスが敷かれた大きなテーブルについている。
ベルが鳴り、一人一人の前に小さな一皿が出された。
皿に乗っているのは、実ったブトウ一粒。
評議員達はそれぞれにブドウを食す。
ある者は一息に、ある者は味わうようにゆっくりと。
ある者は足りないと言い、あるものは十分だと言い、あるものは多すぎると言う。
採決がなされたが、まとまるはずは無い。
そうして次から次へと評議員たちの前に小さな一皿が運ばれてくる。
焼いた秋刀魚、茹でた銀杏、栗のムース、キノコの天麩羅、蒸したサツマイモ、炊き立ての新米などなどなど。
何度も採決が取られ、何度も否決された。
そして、その時は来た。
レンコンの煮物が運ばれ、評議員たちが口にした時、皆が皆うなずいた。
満場一致での評決が下った。
この一皿が、この先1年の「1おいしい」の基準となったのだ。
その他
公開:18/11/15 22:17

AlterLowe( 噂の集まる夏の夜 )

※このアカウントは微力ながら月の音色を応援しています。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容