無力

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私は神になった。この世界では何でも出来る。目の前の街を一瞬で焼くこともできる。けれど…。
「なぜ、私がお前達を新しい世界に移したと思う?なぜ、私を殺した奴らを生かしたのかわかるか?」
人々は凍りついた。街に続く盛りに稲妻が落ちた。光と炎、雨が降る。
夜の無い世界、悲しみも憎しみも無い世界。私はそれを求めていた。
人々はただただ怯えるだけだ。それが私の怒りを尚更のことかきたてた。
「お前達は、今、自分たちを無力ないじましい人間だと思っているのだろう?私が力を得たから。傲慢な『無辜の民』め」
堪えきれず、私は一軒の家に雷を落とした。
火がついたように赤ん坊が泣き出した。だが、ほかは誰も声をあげない。怒りも悲しみも、絞り出した慈悲の心もこいつらには届かないのか。

ふっと、私は一歩退いた。
「神など無力なものだな。感性の欠けた人間には、神といえども物を分からせることなどできないのだな。」
ファンタジー
公開:18/11/17 15:06

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