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特急通過駅の夜のホームに人影はまばらだ。
「間もなく特急電車が通過―」
トレンチコートを着た背の低い中年の男の横に並ぶ。一台目の通過。長めに編んだマフラーが、男の短い首に引っかかる…
「続いて特急電車が―」
男が戸惑った顔をむける。私はホームのカメラに背を向けて微笑みかける。男がニヤける。二台目…
私は叫びながらマフラーを死に物狂いで引っ張る。男の首にマフラーを食い込ませながら、同時に私は、首からマフラーを解く。
「―お下がりください!」
マフラーの先が線路にたなびき、一瞬で男の姿が消えた。音。音。音。
駅長室の入り口は網入ではないスリガラスで建てつけが悪い。石油ストーブの上で、ヤカンがカン、カンと音を立てている。花の無い水盤には乾山が剥き出しで、壁の鏡には皹が入っている。
「たいへんだったですねぇ。まあおかけください」
パイプ椅子はグラグラする。私は鞄から編棒を取り出す。
「間もなく特急電車が通過―」
トレンチコートを着た背の低い中年の男の横に並ぶ。一台目の通過。長めに編んだマフラーが、男の短い首に引っかかる…
「続いて特急電車が―」
男が戸惑った顔をむける。私はホームのカメラに背を向けて微笑みかける。男がニヤける。二台目…
私は叫びながらマフラーを死に物狂いで引っ張る。男の首にマフラーを食い込ませながら、同時に私は、首からマフラーを解く。
「―お下がりください!」
マフラーの先が線路にたなびき、一瞬で男の姿が消えた。音。音。音。
駅長室の入り口は網入ではないスリガラスで建てつけが悪い。石油ストーブの上で、ヤカンがカン、カンと音を立てている。花の無い水盤には乾山が剥き出しで、壁の鏡には皹が入っている。
「たいへんだったですねぇ。まあおかけください」
パイプ椅子はグラグラする。私は鞄から編棒を取り出す。
ミステリー・推理
公開:18/11/17 09:35
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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