ミルフィーユのラッパ

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まさに千の葉と評すに相応しい。
珍しい枝垂れの大銀杏。頭上から傾れる金の瀑布。
玉砂利の境内に舞い散る姿は、あたかも音の飛沫を吹き鳴らす管弦楽団。
――と、地方紙の三面に見たのを思い出し、車を走らせた。

見頃にやや早い緑黄色のラッパ達は、リハーサルめいた澄まし顔。
狭い舞台に行儀良く頭を下げていた。
根方に、指揮台のごとく白看板。どうやらこの樹、文化財らしい。
『まれにラッパ型の葉を……』
不思議な記述に興が乗り、宝探しの心境でトライ。
見付けたら験が良いだろう。無数に連なる緑黄色。
正確な形も、あるかどうかも判らない真のラッパ。

小一時間粘って諦めた。
判定基準もないのに無茶だ。
いっそ本当に鳴れば。駄目元で耳を澄ます。
――♪
今、聞こえた?

――ト―フィ――――
がっくり。豆腐屋だった。
さすが田舎。しみじみ聞きつつ後にする。
しかしこの音、微妙に調子外れだ。



~♫~♩♬
ファンタジー
公開:18/11/14 18:52

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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