青年よ、剣を持て

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 人を惑わせる柘榴石の眼。金剛石の鱗は矢を通さず、爪と牙は鉄をも引き裂く――
 竜の話である。悍ましい容姿だがそれでも山奥に蟄居していれば人の口に上ることもない。が、困ったことにその性は残虐。おまけに強慾ときて世の人々は気息奄々と喘いでいるという。
 悪竜、忌むべし。
 人伝に噂を聞いた青年は立ち上がった。
 青年は堅実にも自分の他にも勇士を募り、希少金属の武具を拵えては練兵に心血を注いだ。竜と一騎打ちなんて命が幾つあっても足りないのだ。
 一端の武装勢力として土台を固めたところで時の王の目に留まる。スポンサーになってくれるかと思えばそうではない。危険民兵組織として糾弾され兵を差し向けられた。
 勢い余って国王を斃してしまったのも拙かった。
 獣食った報い。荒廃した国を立て直すのにだいぶ苦労する羽目になる。斯くして意図せず青年は王権を手にしたのである。

 そして悪竜現るの報を聞く――
ファンタジー
公開:18/11/14 17:56
更新:18/11/20 19:58

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