人形の秘密

とある場所に一軒の老舗洋服店がありました。
そのお店は街の大通りに面しています。
ですから、毎日、ひっきりなしに観光客や近所のお姉さんたちが服を買うため店を訪れます。
店のショーウィンドーには綺麗なドレスを身に纏った女性のマネキンが飾られていました。彼女はキャサリンと呼ばれています。
ある時、キャサリンは道路の向こうから自分に向かって手を振る男性に気付きました。どうやら、工事現場の作業員の様です。変な人、最初はそう思っていました。でも、その男性は雨の日も風の日もキャサリンに向かって手を振っていました。
「まあ、今日も来てくれたのね。嬉しい」
いつしか、キャサリンはその男性を目で追うようになりました。どうやら彼女はあの男性に恋をしてしまった様です。
あれから三か月後、あの男性はキャサリンの前から急に姿を消しました。道路工事が終わったからです。
この失恋は誰も知りません。彼女だけの秘密なのです