鳩とペンギン

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 白い鳩を胸に抱いた少年が、放課後を歩いていた。
 六羽のペンギンのうち、四羽までが水路を流れていってしまったから、彼は残った二羽のペンギンを抱えて歩いてきたのだ。

 少年は課題の一問がどうしても分からなかった。今日の自習監督は英語の女教師で、みんなの質問攻めにあっていた。
 得意だったはずの幾何。
 そこには、あまりにもラインが少なすぎると思った。少年の友人が、替わりに手を上げてくれた。女教師は少年からプリントを受け取ると少し動揺して、準備室に退いた。それから、自信に満ちた足取りで戻ってきて言った。
「これは、正弦角度の総和の算出が必要なの。色鉛筆を貸してみなさい」
 だが少年達は、その方法では駄目だということを知っていた。それに、色鉛筆も持っていなかった…

 鳩は傷ついていて、少年に全てを預けてうなだれていた。少年は別離の悲しみを胸に秘め、流された四羽のペンギンを思い返して泣いた。
青春
公開:18/11/14 13:52

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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